G-Media 現場にフォーカス

こんなことやってます!国際映像部

試行錯誤のヨーロッパIP伝送現場

ニュースの取材現場ではインターネットによるIP伝送が主流になっている。衛星通信に比べて時間、場所、コスト面で有利だからだ。ただ、海外では国や地域によって通信インフラの安定度は違い、思わぬトラブルに直面することがある。

Gmedia こんなことやってます 横山圭司

 

「こちらで見ていると映像が時々にじみますね。」
 今年6月イタリアのボローニャで行われたG7環境相会合が行われた現場からIP機材のデジェロを使って東京まで回線を繋ぎ、昼ニュースで中継リポートがもうすぐオンエアに入るところで東京から連絡を受けた。IP回線が不安定になっているという。だが現場で直ぐに打つ手立てはない。もうこのまま行くしかない―。
 この2週間前にデジェロを使って同じくイタリアのシチリア島からG7首脳会議の中継を行った時は、回線は非常に安定していてトラブルは一切なかった。 同じ国で同じIP機材を使っても回線の繋がり具合がまったく違うということがおこる。これが海外でのIP伝送オペレーションの実態だ。

 私の駐在するヨーロッパ総局にはIP機材がデジェロなど5台配備されており、テロなどの緊急対応に備えている。駐在1年目の2017年、私もIP機材を抱えて銃乱射テロが発生した ミュンヘン、教会が襲撃されたノルマンディー、警備中の兵士が襲撃されたパリ市内のルーブルなどの事件現場に駆けつけて伝送した。
 しかし、状況によってはIP伝送に頼れないケースもある。取材現場に多くのメディアが集まり一斉にIP機材を使い始めると携帯電話の電波を奪い合うことになり、回線が繋がらないことがある。今年春、世界が注目したフランス大統領選の陣営中継がまさにそうだった。
 こうした状況では「出店」とよばれるサービスを利用するよう直ちに方針転換する。EBUやAP、ロイターといった事業体がニュース現場に衛星通信アンテナ付きトラックを派遣してTVメディア向けに中継用の衛星回線を提供するサービスだ。
 出店の利用は予め回線ブッキングを入れて衛星回線の受信を手配しなければならない。一方、IP伝送はこうした手続きは一切不要なので現場の機動力は格段に上がる。
 海外のIP伝送現場では思わぬトラブルに直面するが、試行錯誤を繰り返しながらノウハウを蓄えて、それが世界のどこかで行われる次のオペレーションで活かされるように国際映像部内で共有している。そしてIP伝送を行うことが難しい時には直ぐにプランBの出店を使った伝送ができるよう、日頃から出店会社とパリやロンドンで会い良好な関係を維持することに努めている。
 冒頭のボローニャ中継の話に戻ると、この時はデジェロに海外ローミングのSIM3枚と地元イタリア通信キャリアのSIM3枚の合計6枚搭載して当初運用していた。通常、搭載するSIMの数が多いほど通信速度を上げることができる。現場で通信状況を確認すると、海外ローミングSIMの接続が時々不安定になることが分かった。思い切って海外ローミングのSIMを全て取り外してイタリアのSIM3枚だけで接続したところ、回線は安定し映像がにじむ現象も無くなった。そして翌日の朝ニュースの中継ではボローニャ旧市街の美しい街並みを背景にした中継を無事に出すことが出来た。

(2017年10月)