G-Media 現場にフォーカス

こんなことやってます!字幕展開部

競馬中継に初めて生字幕付与
 ~幅広いコンテンツで役立つ字幕を求めて~

2016年度までに総合テレビ100%生字幕付与目標達成のため、年度ごとにその対象を広げている生字幕。2014年から競馬中継に挑むことになりました。白熱する勝負の世界を分かりやすく表現したい。しかしそこには“ことばの壁”が立ちはだかっていました。

ことばの壁“1分間に519文字と275文字”

何の数字かと言いますと、最初の“519文字”は昨年の「第73回皐月賞」競馬中継でコースの第2コーナーから第4コーナーまでに実況アナウンサーが話した、“ことばの数”です。そして“275文字”は、キーボード入力方式で生字幕をつける際の1分間のアベレージ数です。

キャプションサービスによる キーボード入力

キャプションサービスによる キーボード入力

4月20日開催の「第74回皐月賞」に初めて生字幕をつけることが決まったとき、まっさきに頭に浮かんだのは「さあ、どのようなルールでこれを切り抜けようか」ということでした。519文字話されることばを275文字表現できるエンジンで描写するには大胆な省略が必要です。やみくもに省略してレースの流れを台なしにしてはいけません。また、それほど早口でない場面でも生字幕の性質上、発話されてからその字幕が出るまでにはどんなに早くても4秒は遅れます。発話されたことばを一言一句表現していてはどんどん映像と字幕がずれてしまい、字幕を必要とする人たちの内容把握の妨げにしかなりません。

字幕化ルールの決定

レース開始を前に徐々に緊張が高まる生字幕のスタジオ

レース開始を前に徐々に緊張が高まる生字幕のスタジオ

そこで過去の競馬中継を何度も見直して、以下のようなルールを作りました。

  1. パドック⇒馬番・馬名のみ字幕化し、馬体重や親馬の名前は省略。本馬場⇒原則、字幕化なし。
  2. レース⇒「先頭馬争い・1番人気馬・1000mラップ」の3点にしぼり字幕化。第4コーナーにさしかかったらアナウンサーの字幕化をやめ、“(大歓声)”などの表記で状況描写し、ゴール後、字幕化を再開。

レース実況での要は大胆な省略です。マシンガンのように話されるアナウンサーのことばを「先頭馬争い・1番人気馬・1000mラップ」に限定して本当に大丈夫なのか?しかし、対象を広げれば広げるほど映像と字幕は“ズレ”を生じてしまい、読みにくい字幕になることは経験により予測ができます。

いよいよ本番 結果はいかに?!

初めて生字幕がついた競馬中継「第74回皐月賞」

初めて生字幕がついた競馬中継「第74回皐月賞」

レース当日。目の覚めるような晴天のもと、NHK白崎アナウンサーの落ち着いたナレーションで「第74回皐月賞」の中継が始まりました。序盤のパドックでの馬の状態解説や本馬場での馬の紹介は、字幕をグッと減らしたおかげで、非常にスムーズに字幕がつきました。さて、問題のレース。先頭馬争いは順当に描写できました。しかし、中盤にさしかかったところ1番人気のトゥザワールドに動きがあまりなく、アナウンサーは隊列を淡々と描写しているため字幕が少し間の抜けた状態になってしまいました。その状況をとっさに判断し機転を利かせたキーボード入力者が2番人気のイスラボニータの実況を打ち始めてくれたことにより、見事復活。トータルとして状況がよく伝わる生字幕をつけることができました。この放送での反省を受け、レース実況のルールを「先頭馬争い・1~3番人気馬・1000mラップ」に拡充。その後、「第149回 天皇賞」、「第19回 NHKマイルカップ」と続けて生字幕をつけましたが順調にすすんでいます。「字幕をつけてくれたおかげでテレビをよく見るようになった。」聴覚障害者に限らず、高齢者もこう発言する方々が非常に増えてきています。字幕を必要とするひとりでも多くの方に、よりよい字幕を届けたい。この思いを胸に、今後も試行錯誤を重ねながら“生字幕チーム”一丸となって頑張って行きたいと思います。

(2014年6月)