“音を字幕で表現しきる”仕事に使命を感じています

金窪 夏生

字幕制作ディレクター

1999年入社
立教大学卒

“音を字幕で表現しきる”仕事に使命を感じています

プロフィール
趣味は、ジョギング。体調にあわせてBPMを選び、音楽を聴きながら走るのが最近のスタイル。仕事柄、音にはこだわっていて、イヤホンやヘッドホンも収集。オンライン会議(とジョギング)用に骨伝導イヤホン、文字起こしには、レコーディングスタジオでの使用を目的に開発されたヘッドホンなど、用途にあわせて使い分けています。大切にしている言葉は「置かれた場所で咲きなさい」。

音を文字で伝える仕事です

私が制作する字幕は、リモコンで切り替えると表示される「クローズドキャプション」と呼ばれるもので、音を聞き取りづらい方などに向けて番組の音を文字で伝えるものです。ドラマや教養番組など事前収録されたものにつける字幕は「完プロ字幕」、ニュースやスポーツ中継など生放送につける字幕は「生字幕」と呼ばれ、わが社ではそれぞれチームに分かれて制作しています。

いま私が所属しているのは完プロ字幕の部署です。NHK総合などで放送される事前収録番組のほとんどに字幕をつけるので、部署として担当する番組は週におよそ200本。多い時は、週に320本ほどになることもあります。そうした番組のすべてで、オペレーターが字幕を制作。その字幕を、実際の番組に重ね合わせて試写をし、修正したものを放送までにデータとしてNHKに納品するというのが基本的な仕事の流れです。この一連の流れが滞りなく進むように調整・管理するのが字幕制作ディレクターとしての私の役割になります。

字幕の「♬~」は音楽が流れていることを、「phone_iphone」(点滅)は電話が鳴っていることを表します。健聴者の耳に聞こえている音声情報を、聴覚障害がある方にあまねく伝わるよう字幕の文字で伝えることが目標です。

楽しい仕事 でも常に試行錯誤

そもそもNHKの字幕放送は、1983年の連続テレビ小説「おしん」から始まっていて、2025年に100年を迎える日本の放送史の中では、わりと新しいものです。入社以来、私はずっと字幕制作の部署で仕事を続けていますが、入社したばかりのころは、なにもかも確立されていませんでした。当初の字幕は、全て完プロ字幕で、映画字幕のように短く要約されたものが良しとされていましたが、今は、放送内容をできるだけそのまま文字にするという方針です。「音声が聞こえる人も聞こえない人も同じような視聴体験ができるように」という考えからです。字幕の表現も変化しているんです。

日本初の生字幕放送は2000年。「ニュース7」のスタジオアナウンサーが、読み上げる部分に限定したものでした。NHK放送技術研究所で研究を進めていた、機械による音声認識技術を使って、リアルタイムで文字を起こすシステムを放送現場で導入したことがきっかけです。その後、NHKでは、音声認識を使った生放送字幕を担当するチームができました。私もそこに加わり、紅白歌合戦などのエンターテインメント番組を皮切りに、大相撲、プロ野球、サッカーといったスポーツ番組、「あさイチ」などの情報番組などに次々に字幕をつけていきました。

ところが音声認識の機械は、なかなか文字が出てこなかったり、誤字が非常に多かったりして目論見どおりにはいきませんでした。音声の認識率を上げるために、アナウンサーやゲストが、放送でしゃべりそうな単語を予想して、自分たちで辞書をつくったり、とにかくいろんな試行錯誤をしましたね。

生字幕の制作現場では、「字幕キャスター」が生放送の実況や解説を聞き取り認識しやすいように言い直した音声を「音声認識装置」を使って文字化したり、複数のオペレーターが高速で入力し、数秒間ずつリレー式に入力を繰り返したりして、表示の遅れを極力抑えながら字幕を表示できるようにしています。

じつは細かく こだわりがあります

私がずっと心がけているのは「正しく、はやく、わかりやすく」字幕をつくること。そして、音声を字幕で表現しきることです。その追求には、終わりがありません。たとえば、いま担当する完プロ字幕の仕事は、音声を文字に起こすことだけではありません。映像とタイミングを合わせて表示したり、誰が話しているかがわかるように文字を色分けしたり、オープンキャプション(いわゆるテロップ)と重ならないようにレイアウトを調整したりといったことも行います。ドラマ番組「岸辺露伴は動かない」では、原作漫画の表記にこだわって字幕にしました。ドラマの台本と原作漫画を1コマ1コマ見比べて「ッ!」「ァァァッ!」など、原作に依拠した表現をとことん追求しました。このドラマ独特の世界観を字幕でも伝えたいという考えからです。また、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では俳優の「襟を正す」所作を字幕で隠さないように、字幕を通常と異なる位置で表示したこともありました。いずれも視聴者から思わぬ反響がありました。「字が間違っている」というお叱りを受けることもありますが、まれにお褒めの言葉をいただくと非常に励みになりますね。

字幕に広がる 新たな可能性

私は字幕制作に20年以上携わり、日本の字幕放送を常に先行してきたという自負がありますが、そんな私が目を見張るほど、最近の技術革新はすさまじいスピードです。20年前に私たちが苦労した音声認識も、今は認識率が格段に上がり、スマホでも使える時代です。ちょっとくやしい気持ちもありますが、新たな技術を使って、これまでにないチャレンジができるとワクワクすることの方が多いです。その一つが、放送以外の分野へのノウハウや技術の転用です。私たちの会社では、イベント会場でスクリーンに投影された映像に生字幕をつけたり、日本語を英訳して生字幕にしたりといったことも行っています。字幕を活用するアイディアはまだまだいろいろ考えられます。これからの世代には、新しい知識と偏見のない考え方で、仕事や組織を新陳代謝してくれることを期待しています。「こんなことは可能だろうか?」「そのためには何をすればよいだろう?」そんなことを自分で進んで考えられる、頭で汗をかくことのできる人たちに仲間になってほしいですね。


1日のスケジュール

  • 10:00 出社
    メールをチェック(字幕制作する映像素材の入手スケジュールを確認)
    関係部署に問い合わせ(スケジュール調整が必要な部署には個別に連絡)
  • 12:00 昼食・休憩(放送センター内の食堂で、同僚ととる機会が多いです)
  • 13:00 スケジュールを作成(納品日、内容にあわせてスタッフの配置など検討)
    部署内の問い合わせ対応・打合せなど
  • 18:30 退社

小堀 剛

映像制作ディレクター

ニュース映像を届ける“最終走者”「伝えたい」という気持ちを大切にしています

金窪 夏生

字幕制作ディレクター

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渡邊 朱里

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餌取 慎吾

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番組は自分ひとりでは作れません人と出会い、つながり、思いに耳を傾ける

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